カスハラ対策と予防に。従業員を守り、顧客をファンにするアクティブリスニング

株式会社Lively
NHKの首都圏情報ネタドリ!に弊社代表の岡えりが出演しました - 株式会社Lively NHKの首都圏情報ネタドリ!のカスハラ特集に弊社代表の岡えりがアクティブリスニングを活用したカスハラ対策研修の講師として出演しました。 放送概要 ・放送局/番組名:N...
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カスタマーハラスメントとカスハラ対策

カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、顧客から暴言、暴行、脅迫、過剰な要求や不当な言いがかりといった迷惑行為の総称です。

「クレーム=カスハラ」だと捉えている人もいるようですが、クレームのなかには正当な改善を求めるものもあり、一概にすべてのクレームがカスハラに当たるというわけではありません。

具体的なカスハラの例としては、顧客が従業員に対して暴力を振るう、暴言を吐く、大声で怒鳴り散らす、ささいなミスにもかかわらず長時間にわたり謝罪や土下座を要求するなど…。そういった過剰な要求や不当な言いがかりは、カスハラであると考えられます。

本記事では、企業がカスハラから従業員を守るためだけでなく、対応によって顧客をファンにする機会になる可能性を示すものになることを目指し、アクティブリスニングを活用したカスハラ対策についてご紹介いたします。

カスハラの対策として、アクティブリスニング(積極的傾聴力)をテーマにした研修や勉強会も開催しておりますので、ご興味のある方はご連絡くださいませ(ページ末にフォームあり)。

カスハラは増えている?

昨今、カスハラは増加傾向にあると言われています。

カスハラが増えている理由としては、SNSの発展にともない個人の声が発信として目立つようになったことがあげられます。SNSで聴衆を味方につけることで、より一層発信力が増し、気が大きくなってカスハラをしやすくなるという背景が考えられます。

また、これまでであれば問題とされていなかった顧客側の言動が、ハラスメントという社会問題として注目されはじめた点も、カスハラが増加している要因の一つと考えられます。

カスハラ対策は企業の間で徐々に広まりつつありますが、まだ十分とは言えません。また、その対策も「起きたらどうするか」にとどまっているケースがほとんどだと思われます。

カスハラ対策のご相談をいただいた企業様が一番問題視していることは、「カスハラが原因となり、仕事のパフォーマンス低下や、精神的に追い込まれ休職や離職につながる」ことです。

「職場のハラスメントに関する実態調査」を見てみると、顧客等からの著しい迷惑行為を受けたことによる心身への影響として、「怒りや不満、不安など感じた」(67.6%)の割合が最も高く、次いで「仕事に対する意欲が減退した」(46.2%)という結果が出ています。中には不眠や、病院を受診する、休職につながるなど、精神的なダメージが大きく身体的な症状も引き起こしているこが伺えます。

職場のハラスメントに関する実態調査のグラフ

せっかく苦労して採用し育成した人材が抜けるのは企業にとって非常に大きな損失です。長期的に人材を確保できず、競争力を失ってしまう可能性すらあります。

また、企業のカスハラ対策が不十分だと、場合によっては従業員から安全配慮義務違反が問われる可能性もあります。しかしながら、カスハラ対策をしっかりできている企業はまだ少ないのが実態です。

以前「従業員のメンタルヘルスケアにアクティブリスニングが活用できるのではないか?」ということで、神奈川県のご支援をいただき、kmタクシーで知られる国際自動車株式会社様と実証実験をさせていただきました。そのときにも、「お客さまとのやり取りでメンタルがやられてしまって、休職や退職に追い込まれてしまったケースがある」という話を伺いました。

3つのカスハラ対策について

私たちが考えるカスハラ対策は3つの軸を基本としています。

その3つの軸とは、①カスハラが起きたときにどのように対応すべきかの対策(対処)②カスハラをされた時に従業員の心を守ること(防御)③カスハラを起こさせないようにする(予防)です。

カスハラ対策としての対処や防御も大事ですが、それ以上に予防も大切です。アクティブリスニングはカスハラへの予防策としても効果があります。

まず、対策については、厚労省の「カスタマーハラスメント企業対策マニュアル」が非常にわかりやすいので、そちらを参考にしていただき各社でしっかりと対策のガイドラインを作成していただくと良いと思います。

  • カスハラに対する企業姿勢を示し、対応マニュアルを作成する
  • カスハラ対応マニュアルを現場レベルでしっかりと研修して周知させる
  • カスハラ情報は全社で共有する
  • 従業員のケア・フォローができる体制を整える

私自身、医療職や個人で話を聴くという仕事をしてきたなかで、セクハラやカスハラを受ける経験をしてきました。

カスハラに対しては、適切な対応をすることが重要です。自分でも「ここまでは応じる、これ以上は顧客として見ない」とハッキリと線引きをして対応をしていました。

一方で、何でもかんでもカスハラと決めつけてしまい顧客と距離をとることが必ずしも良策と言えません。顧客を刺激し、エスカレートすることもあり得ます。反対に、うまく導くことができれば、ファンになってくれる可能性もあるのです。

カスハラを対策するだけではなく、「ファンにする」という視点もあわせて持っておくことが上級編であると言えます。

私自身も「カスハラになってしまうくらい執拗に関わろうとするほどの熱量を持っているのだから、何とかファンにすることはできないだろうか?」と様々な本を読み、近い経験をした様々業種の方々と話を重ねました。その結果、カスハラ対策とファンにする方法は決して矛盾することなく両立する、むしろ共通しているというところに行き着きました。

そこで、私がやってきたことをベースに、カウンセリングやコーチングなどの技術を取り入れて、できるだけ簡単に再現できる方法を、研修やセミナーでお伝えさせていただくようになりました。その内容をここでも少しご紹介したいと思います。

カスハラの相談に対して適切な対応(対処)ができているか?

従業員がカスハラを受けたあとの行動で最も多いのは、「社内の上司へ相談」で48.4%となっています。次に「同僚に相談」で34%。次に多いのが「何もしなかった」24.3%という結果になっています。

厚生労働省 職場のハラスメントに関する実態調査のグラフ

もしカスハラを受けた従業員がすぐに上司に報告し、上司が冷静に事実確認をし、適切に現場対応することができれば、問題は早期に解決します。また、必要に応じてケアが必要と判断すれば、社内外の適切な窓口に繋ぐことで、精神的なダメージ軽減につながります。

しかし、実際はなかなかそのように立ち行かない現実です。

例えば、上司に相談した時に「今は忙しいから文章に書いて報告してくれ」と言われたらどうでしょう。部下は「あぁ、相談しても無駄だな」と思って次から相談しなくなるかもしれません。

また上司や同僚が話は聞いてくれたものの「それは、あなたにも非があったのでは?」とか「よくあることだから気にするな」などを伝えられたとしたらどうでしょうか?

報告・相談したにも関わらず、受止めてもらえなかったり、逆に責められたりしてしまうことでカスハラを受けた人のダメージは大きくなります。ただでさえハラスメント行為により心のダメージを受けているところに、身近な人にも味方になってもらえなかったというさらなる精神的ダメージが加わり、会社への不信感につながる可能性もあります。

これらが一度でもあると、結果的に、カスハラを受けた後の行動で3つ目に多かった「相談しなかった場合」になっていきます。個人がうまく精神的ストレスやダメージを回復させることができれば良いかもしれませんが、一人で問題を抱えてしまい精神的ストレスが癒やされない状態になってしまいます。さらに企業としてもカスハラの問題の発見・対策ができないまま問題が放置されてしまいます。まさに悪循環です。

初期対応次第で、会社や上司への不信感や問題解決に支障がでる可能性がありますので、日頃から従業員が問題を隠さずにすぐに話せる関係を築くため、心理的安全な組織をつくりが大切です。

そのためには、日頃から相談に対してしっかりと向き合い、最後まで口を挟まずに話を聴いて受止めた上で、個人を責めることはせずに一緒に対策を考えることができるという関係づくりが大事なのです。まさに心理的安全な組織づくりのためには、管理者のアクティブリスニングスキルを高めることが鍵になるのです。

カスハラから従業員の心を守る(防御)方法

次にカスハラから従業員の心を守る方法についてです。

真面目な人ほど、お客さまの声をまっすぐに受止めてしまいダメージを受けやすいという傾向があります。そのような人ほど、例え理不尽と思われる顧客の言動だとしても、カスハラを自分の責任と捉えがちです。

まずは「どれだけ日頃からお客さまに対して真摯に対応していたとしても、防げないカスハラも存在する」ということを認識しておくことです。

ハラスメントを行う人々には対人関係が未熟である傾向があるという研究データがあります。対人スキルの欠如や社会的技能の不足が、ハラスメント行動を促進する要因として挙げられています。

なので、ハラスメントを受けたとしても「対人関係構築が発達途上なのかな」と俯瞰して捉えるようにします。その際に気をつけることは、相手をバカにする態度にならないようにする、ということです。

あくまで毅然とした態度であることが必要です。これは別の問題ですが、「カスハラなど不適切な行動をとる人はダメな人」と判断するのではなく、「そういう人だ」と客観的にも思えるように日頃から人を優劣(◯か×か)で判断しないという姿勢が訓練になります。まさに多様性(ダイバーシティ)の姿勢をもつことが大事になります。

とはいえ、自分自身に心の余裕はない場合は俯瞰してみることが難しい場合もあります。疲れてクタクタの時に人に優しくするのは難しいものです。体が疲れていると、心も疲れます。心が疲れている時、弱っている時、余裕がない時は、傷つきやすく、怒りやすくもなります。ですので、日頃から自分の心と体を良い状態に整えておくことが重要です。

体を休ませることに関しては、「寝よう」「お風呂に入ろう」などこうすれば良いという自分なりの方法をもっている人は多いですが、自分の心の状態を良くするための方法(コーピング)をもっている人は少なく、心のリカバリーが苦手な人ほど心が病みやすいと言えます。

睡眠法や呼吸法などが近年話題になってきていますが、もう一つ、職場内外に信頼できる相談相手をもつことは非常に有用になります。

企業としても、従業員が能動的に利用しやすい外部の相談サービスなどの設置を検討するのも良いでしょう。LivelyTalkが企業に利用されている理由の一つは、まさに従業員の心のリカバリー、メンタルヘルスケアが目的です。

そもそも、カスハラを起こさせない(予防)

ハラスメントの予防措置

パワハラやセクハラなどは、ハラスメント行為者が社内にいるため、企業としてハラスメント行為者に対して措置が可能です。一方でカスハラは、行為者が顧客であるため、事前措置(=予防)が容易ではないといわれています。

カスハラをしやすい顧客の特徴としては、高収入、中高年、男性という傾向がありますが、実は、カスハラを受けやすい従業員にも特徴があります。企業においても、よくクレームをもらう従業員と全くもらわない従業員がいるのではないでしょうか?

従業員の顧客対応が、顧客によるハラスメントの発生確率に大きく影響することが研究データより示されています。

顧客対応が良く、効果的なコミュニケーションと苦情管理の訓練を受けた従業員は、攻撃的な行動を起こしやすい顧客からのハラスメントを受けにくいとされています。

非言語コミュニケーションと言語コミュニケーション

コミュニケーションには、言語コミュニケーションと、視覚情報や聴覚情報など言語に頼らない非言語コミュニケーションがあります。何を話すかという言葉だけでなく、実は非言語コミュニケーションが相手に与える印象の方が大きいのです。

例えば、来店したお客さまに対して、清潔感のある従業員が、お客さまに身体を向け、目を見て、笑顔で、姿勢良く、「いらっしゃいませ!ご来店ありがとうございます!」とハキハキ伝えたとします。いきなり、お客さまが文句を言ってくることは想像しにくいのではないでしょうか?

一方で、だらしない身なりの従業員が、背中を向けたまま、目を合わせず、無表情(またはむっとした表情)でやや猫背で「いらっしゃいませ!ご来店ありがとうございます」とダルそうに聞き取りにくい小声で伝えた場合、明らかに悪い印象を与えます。イライラしていた顧客じゃなくても、クレーム発生させる可能性が高まることは想像に難しくありません。

  • アピアランス(見た目の清潔感や姿勢)
  • 表情(落ち着き、笑顔、心の余裕)
  • 態度(感謝の対応、毅然とした心持ち)
  • 声(聞き取りやすく適切な声量・トーン、好感度のある言葉)
  • 話し方(丁寧な言葉つかい、相手に話すスピードをあわせる)

など、大人になってから注意されにくい部分かもしれませんが、相手の対応は自分の鏡だという意識をもち、まずは相手をよく観察し、当たり前のことを徹底して実践することから始めるのがよいでしょう。

言語コミュニケーションにおいては、傾聴力、会話力、質問力の3つを高めることで、より顧客をファンにすることができます。

できているようで、よく見ていくと改善の余地があることによくあります。

例えば、話を聴いているようで話を途中で遮って自分のしたい話をしてしまっている。相手の話に知ったかぶりで反応している。相手の話したい話を掘り下げずにスルーしている。思いつくまま意図が不明な質問してしまっている。デリカリーのない質問をしている。矢継ぎ早に質問をして相手は尋問に感じている。

ちょっとした心構えとトレーニングで確実に良くなり、顧客との信頼関係を深めることができます。アクティブリスニングは非常に応用の広いスキルなのです。

終わりに

コミュニケーションの対応方法は一つの正解があるわけでありません。状況や相手の感情など毎回違います。なので、毎回先入観を捨て、眼の前の相手を観察し、傾聴し、質問をして深堀りしていくことがが大切です。普段から相手の話を聴いている人は相手の違和感など見分ける力もついてくるので、必然とお客さまとのうまい距離感の保ち方もうまくなっていきます。

従業員を守り、顧客をファンにするカスハラ対策とカスハラ予防するアクティブリスニングについて、お伝えさせていただきました。より深く学びたい、従業員の心のリカバリーとして何か対策としたい、という企業様はお気軽に相談いただければ幸いです。お力になれることがあれば嬉しく思います。

企業ご担当者様へ
カスハラ対策に限らず、組織のマネジメントやセールスにアクティブリスニングスキルの教育や、従業員などのメンタルヘルスケアに対して、情報収集をしたいと思っていらっしゃるご担当者の方は、限定情報や動画のご案内をさせていただきますので、下記のフォームに入力ください。またセミナーやイベントなどを実施する際にオトクなご招待やご優待をさせていただくこともございますので、是非楽しみにしていてください。

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この記事を書いた人

岡えりのアバター 岡えり 株式会社Lively 代表取締役

聴くコミュニケーションで働くチャンスをつくり社会の孤独を減らすために起業。医療職出身のアナログ人間がWEBサービス立ち上げ奮闘中。多種多様な人に話をきいてもらうLivelyTalk(https://www.lively-talk.com/)運営。3児の母。沖縄出身。ビール好き。

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